File no. 195

《FILA/フィラ》

聖地ミラノを擁するイタリアは、世界的なラグジュアリーブランドを数多く輩出してきたファッション大国。

また、上質なレザー製品の産地としても名高く、その評判は世界中に認知されている。

今回は、そんなグローバルなファッションシーンを牽引するイタリアから生まれたスポーツブランド《フィラ》 の歩みを紐解く。

アルプス山脈の麓に位置する、美しい自然に囲まれたイタリア北部の小都市ビエラ。

ここは豊かな水資源にも恵まれ、古くから世界の高級服地を生み出す一大産地としてその名を知られているが、そこで家業の木工業を営んでいたフィラ・ファミリーが 1911 年に梳毛ウールの紡績会社を設立。

ここから《フィラ》 の歴史が幕を開けた。

創業以来、着実に繊維製造のノウハウを蓄積しつつ、新たな市場の発展に合わせて積極的な開拓を進めながら事業を拡大。

1968 年には主力商材である下着に加え、ニットウエアの開発・製造を開始し、紡績から製織、流通に至るまですべての工程を自社内で一貫して行っていた。

1970年代に入ると＂レジャー＝スポーツ＂という新たなライフスタイルの概念にいち早く呼応し、人気の高まりを見せていたテニスに注目。

1973 年、もともと下着製造に使用していた機器を応用し、テニス用リブ編みコットン T シャツを開発。

この時、製品に添えられたのが、現在もブランドの象徴として親しまれている赤と青の「F-BOX」ロゴである。

このブランドロゴが確立されてから一年後の 1974 年、《フィラ》 初のテニス・コレクション「ホワイトライン」が発表された。

テニスコート上のラインを由来とするこのコレクションは大きな成功を収め、アドリアーノ・パナッタとの契約を皮切りに、ビョルン・ボルグなどの名だたるプレーヤーたちが着用した。

このテニスウエアの成功を契機に《フィラ》 の快進撃が始まる。

1976 年にはクライミングとスイム・コレクションを展開し、1980 年代にはスキーやゴルフ、そして 1990 年代にはバスケットボールやサッカーの分野にも進出。

いずれの分野においても大きな成果を上げた。

写真の「FX-2」は、1985 年に《フィラ》が初めて世界展開を果たした記念碑的なテニスパフォーマンスシューズであり、登場から約 40 年が経過した今なお、当時を感じさせないほどの鮮度と存在感を放っている。

コート系シューズの世界的な定番として、改めて注目すべき一足といえる。