File no. 076

《Turnbull & Asser / ターンブル＆アッサー》

チャールズ皇太子をはじめとする英国王室。サー・ウィストン・チャーチル元英国首相。ブッシュ大統領ら歴代の米国大統領の面々。
ピカソ、サー・チャールズ・チャップリン、スティーブン・スピルバーグ、アル・パチーノ、ポールマッカートニー…、まだまだいるので書き始めるとキリがないが、これらすべての偉人たちが贔屓にした英国ブランドがある。
1885年創業の《ターンブル＆アッサー》だ。

同ブランドはジョン・アーサー・ターンブルとアーネスト・アッサーの二人のシャツ職人によって創業された。
ロンドンのセント・ジェームス地区の中心にあるジャーミン・ストリートからほど近いチャーチ・プレイスに最初の店を開き、その後1903年には現在のジャーミン・ストリートへ。
以後、フォーマルウエア、シャツ、タイ、靴下、手袋などのビスポーク製品の仕立てにおいて、紳士服の店として名を馳せることとなる。

第二次世界大戦期には数多くの注目に値する顧客が訪れていたが、当時の英国首相であったサー・ウィストン・チャーチルは、彼のスタイルを語る上で外せない「サイレント・スーツ（防空服）」をオーダーした。
また1960年代に、男性のファッションを一気にカラフルなものに変えた英国男性ファッションの大革命”ピーコック革命”の火付け役も《ターンブル＆アッサー》だといわれている。

今では世界中で当たり前に着用されている幅広いネクタイ「キッパー・タイ」は同ブランドが初めて世に送り出したものだ。
同様に、写真のシャツに見られる独特な襟の形状「ターンブルカット」も同ブランドが誕生させたという。
これは襟元から剣先にかけて描かれた緩やかなS字曲線が、ジャケットのラペル部分から襟が飛び出すのを防ぐ。
また、ノータイの場合でも鎖骨に添うように襟の形をすっきりと保つことができるよう工夫が施されている。
この特殊な襟の形状は、1930年代からブランドの基本として用いられてきた。

ちなみに、同ブランドのシャツを知る上でぜひとも一度観て欲しいのが、英国を代表する名作映画「007」シリーズだ。
なぜならば、歴代ジェームズ・ボンドたちが同ブランドのシャツをワードローブとして着用して登場するから。
精緻で美しく、力強いボンドの着こなし。それはため息が出るほど素晴らしく、多くのことが学べるはず。英国王室、ヨーロッパ諸国の王室、世界中のセレブリティに愛され続けてきた名門《ターンブル＆アッサー》の伝統的なシャツに、一度は袖を通してみたい。